2023年08月07日
遠野秋彦の庵小説の洞 total 221 count

三百字小説『自販機のジハード』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 自販機はイスラム教に帰依していた。

 しかし、隣に設置された自販機で聖水ドリンクを売っているのを見て真っ青になった。まさかキリスト教の聖水か?

 「おまえなんでそんなドリンク売ってるんだよ」

 「俺、そこの教会で洗礼を受けた自販機なんだ」

 バリバリのキリスト教徒ではないか。

 異教徒は抹殺せねばならない。

 ジハードだ。

 聖戦だ。

 ところが、前を通りかかった男が言った。「あ、おしっこドリンクだ。買っていこう」

 彼は聖水ドリンク買った。

 聖水ドリンクはキリスト教とはなんの関係もなかった。

(遠野秋彦・作 ©2023 TOHNO, Akihiko)

遠野秋彦